夫に関する辛い出来事を経験した女性のハーパーは心に傷を抱え、休暇を過ごすためロンドンから田舎のカントリーハウスにやってくる。管理人のジェフリーはややステレオタイプでお喋りな男性だが、そんなに悪い人ではなさそう。ただ、町で出会う男性全員が、なぜかこのジェフリーと同じ顔をしている。森の中の不審な人影、教会で出会った牧師、少年、全裸で庭に立っていた不気味なストーカー男性。同じ顔をした男たちにハーパーは追い詰められていき…。
非常に感想を言うのが難しく、また人にもお勧めしづらい、相当に変な映画だった。
話が進んでいくにつれて、実はハーパーの夫は、ハーパーに離婚を言い渡されたことに逆上し、彼女を殴り、「君が一生罪を背負い続けるように」とのたまって、ハーパーの目の前で自殺したことが判明する。
この映画のモチーフの1つとなっているのは、おそらく「創世記」の中の有名な「楽園追放」だと思われる。創世記では、まずヘビにそそのかされたイブが禁断の果実であるリンゴを食べてしまい、次にイブはアダムをそそのかし、2人は神から楽園を追放されます。それによりアダム(男)は食べ物を手に入れるために一生労働の苦しみを背負うことになり、イブ(女)は出産の際に地獄の苦しみを味わうことになったとされている。(これ、そもそも共働きの時代に通用しない罪じゃん!と子供の頃から理不尽に感じていましたが…)
本作でもハーパーが別荘の庭のリンゴの木をもいで食べるシーンや謎の全裸の男が出てくる。現代社会における男性の加害性というのは、旧約聖書で楽園追放をイブのせいにされた頃から始まっていた、ということを描きたかったのでしょうか。ラストは20分近く、今まで見たことがないようなグロテスクなシーンが展開される。映像や美術はとても素敵で、気持ち悪いながらにもグイグイと引き込まれる魅力はあるのだが、問題なのはあまりに映像がショッキングかつ話も難解なので、問題提起にならず、多くの男性が観ても「うわー気持ち悪い映画を観たー」で終わるのではないか?ということだろうか。
出会う男性がみんな同じ顔をしているのは、「男なんてみんな同じ」と言いたいのだろうか、そんなに単純なことではない気もするけど、正直あの設定に込められた意味はあまだあまり理解できていない。
最後にやっと姿を現した友人が妊婦だったが、彼女に夫はいるのだろうか。
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