ジョーダン・ピール監督は“見る”側なのか【NOPE/ノープ 】ネタバレあり感想

映画レビュー
https://eiga.com/movie/97088/photo/

「ゲット・アウト」や「アス」のジョーダン・ピール監督の最新作品。

全編IMAX画角で撮影するというこだわりが活かされた広大な自然を映す迫力満点のシーン、様々な映画のオマージュを盛り込んだSF要素もあり、エンタメ映画として純粋に面白かった!とも言えるが、それだけではない歪さやモヤモヤ感も残った。普段あまり映画を観ない人たちが予告編や、同監督の前2作からの期待値でこの映画を観に行ったら確実にぽかーんとなってしまうのではないかと思うし、私があたまでっかちなだけかもしれないが、『シネフィル以外に理解されなくても結構』といった雰囲気もちょっぴり出てしまっていた気がした。

さまざまな評論や感想で言われていることだが、この映画は「見ることの加害性」を大きなテーマにしている。消費され加害されてきた弱者とは、例えば動物園やショーで自分の意思に反して人間の笑い物や愛玩の対象とされる動物、性的な視点を向けられることで搾取される女性、もしくはエンターテインメントにおいて記号的な役割を押しつけられる黒人やアジア人、かつての見世物小屋で働かされていた障がいのある人たち等も含まれるだろう。「見る」側、映画を「撮る」、つまり搾取する側は白人だけの専売特許ではないとばかりに、主人公の黒人兄妹のOJとエメラルドは、突然あらわれたUFO(?)を自分たちが映画に収めるんだ!と必死でカメラを回す。

ジョーダン・ピール監督は黒人の父親と白人の母親を持ち、自分自身に両方の血が流れていることによる葛藤もあるようで、その辺りは「ゲット・アウト」や「アス」でもかなり描かれていたと思う。今回は、そんな「見られる」対象であった自分と、「見る/撮影する」側である自分を、ウォーキング・デッド等でおなじみのスティーブン・ユアン演じる【元アジア人の人気子役】という設定のキャラクター「ジュープ」に投影していたかのように思えた。彼と、実際にあった事件を基にしたというチンパンジーのゴーディくんにまつわるエピソードはすごく怖くてゾッとするのだが、メインのストーリーとはあくまでも別軸でサブキャラとしての扱いとなってしまっていて、ジュープもあっさり殺されてしまうので、やや消化不良に感じた。あくまでも個人的には、いっそジュープをメインのお話にしてくれたほうが好みだったかもしれない。

私としてはどちらかと言えば前2作のほうが好きだったのだが…今後もジョーダン・ピール監督作品は楽しみに見続けたいと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました